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問題 1

陽子のトンネリング。エネルギー障壁を越える陽子のトンネル効果は水素結合をもつ多くの系(DNA、タンパク質など)で観測される。プロパンジアール(マロンアルデヒド)は分子内陽子移動が起きる最も単純な分子の一つである。(1.1) プロパンジアールの示性式と、それと平衡で存在しうる2種の異性体の構造を書け。(1.2) 水溶液中でプロパンジアールは酢酸程度の弱酸である。酸性水素原子を特定し、その酸性の理由を説明せよ。分子内陽子移動のエネルギー曲線は対称な二重井戸型で、2つの極小間の距離は d=0.06d = 0.06 nm である。(1.3) 2つの極小に対応する構造を書け。陽子は左右の井戸 L, R の間を角振動数 ω=6.48×1011\omega = 6.48\times10^{11} s−1^{-1} で往復する。確率密度は Ψ2(x,t)=12[ΨL2(x)+ΨR2(x)+(ΨL2(x)−ΨR2(x))cos⁡ωt]\Psi^2(x,t) = \frac{1}{2}[\Psi_L^2(x) + \Psi_R^2(x) + (\Psi_L^2(x) - \Psi_R^2(x))\cos\omega t]。(1.4) t=0t = 0, t=π/(2ω)t = \pi/(2\omega), t=π/ωt = \pi/\omega における確率密度の式を書け。(1.5) 計算なしで、t=π/(2ω)t = \pi/(2\omega) において陽子が左の井戸に見出される確率を答えよ。(1.6) 一方の井戸から他方へ陽子が移動するのに要する時間と、移動中の平均速度を求めよ。(1.7) 二重井戸から位置の不確定さ Δx\Delta x を推定し、Heisenberg の不確定性関係 Δx⋅m Δv≥ℏ/2\Delta x \cdot m\,\Delta v \ge \hbar/2 から速度の最小不確定さ Δv\Delta v を計算して (1.6) の古典的速度と比較し結論を述べよ。
ステップ 4/4: Heisenberg 不確定性によるトンネル効果の証明
Δx≈0.03 nm;Δv≥ℏ2mpΔx=1.055×10−342(1.67×10−27)(0.03×10−9)≈1000 m s−1≫vmean=12 m s−1\Delta x \approx 0.03\ \text{nm};\quad \Delta v \ge \frac{\hbar}{2 m_p\Delta x} = \frac{1.055\times10^{-34}}{2(1.67\times10^{-27})(0.03\times10^{-9})} \approx 1000\ \text{m s}^{-1} \gg v_{\text{mean}} = 12\ \text{m s}^{-1}
分析

井戸内の位置の不確定さは Δx≈d/2=0.03\Delta x \approx d/2 = 0.03 nm。Heisenberg の原理から速度の不確定さは Δv≥ℏ/(2mpΔx)≈1000\Delta v \ge \hbar/(2m_p\Delta x) \approx 1000 m s−1^{-1} となり、古典的移動速度 12 m s−1^{-1} より2桁近く大きい。障壁通過時の古典的軌道・速度という概念は無意味であり、移動は純粋な量子トンネル現象である。