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無機化学

錯体の異性と命名法

配位化学式だけでは構造は一意に決まらない。配位子の位置、結合原子、連結様式が異なる異性体があり、系統名は対象構造を明確にする。

直観直観:同じ成分でも配置が異なる

シスプラチンとトランスプラチンはともに[PtCl₂(NH₃)₂]だが、前者ではClが隣接し、後者では反対側にある。この幾何学的差は化学的・生物学的性質を変える。

平面四角形Pt錯体を回転させ、ClとN原子を確認しよう。塩化物配位子が隣接する場合と反対側の場合を比べる。

学校学校段階:違いを分類する

定義: 幾何異性

幾何異性体は結合のつながりは同じだが空間配置が異なる。適切な平面四角形・八面体錯体ではcis/transを用い、八面体の同種配位子3個の配置はfac/merで表す。

定義: 結合異性とイオン化異性

結合異性体は二座性配位子の結合原子が異なり、nitro-κNとnitrito-κOなどがある。イオン化異性体では配位アニオンと対イオンが入れ替わり、溶液中のイオンが変わる。

錯体でよく見られる異性
種類違い例
幾何配位子位置[PtCl₂(NH₃)₂] cis/trans
光学鏡像関係[Co(en)₃]³⁺、Δ/Λ
結合配位原子[Co(NH₃)₅NO₂]²⁺

例: 八面体錯体を命名する

K₃[Fe(CN)₆]のIUPAC式名称を答えよ。

解答

陽イオンを先に命名し、Kはpotassium。錯陰イオンはシアニド配位子6個がhexacyanido、Feは+3で陰イオン錯体名はferrate:potassium hexacyanidoferrate(III)。

大学大学:配位式と系統命名

命名前に配位実体、配位子名・配位数を特定する。倍数接頭辞を無視して配位子をアルファベット順に並べ、金属名とローマ数字の酸化数を続ける。陰イオン錯体では金属名を-ferrate、-cuprateなどにする。

charge du complexe=eˊtat d’oxydation du meˊtal+∑icharges des ligandsi\text{charge du complexe} = \text{état d’oxydation du métal} + \sum_i \text{charges des ligands}_i

曖昧さがある場合、κ表記で配位原子(thiocyanato-κN / -κS)を示す。架橋配位子にはμ、有機金属配位のハプト数にはηを用い、異なる構造情報を表す。

光学異性体は重ね合わせられない鏡像である。二座配位子3個をもつ八面体[M(AA)₃]では右巻き・左巻きらせんをΔ・Λと記す。旋光性はありうるが、旋光方向はΔ/Λからは決まらない。

例: 電荷収支から酸化数を求める

[Co(NH₃)₅Cl]Cl₂中のCoの酸化数を求めよ。

解答

外側Cl⁻が2個なので錯陽イオンは+2。NH₃は中性、配位Clは−1よりx−1=+2、Coは+3。名称はpentaamminechloridocobalt(III) chloride。

平面四角形d⁸ Pt(II)錯体ではcis-[PtCl₂(NH₃)₂]は極性をもち、trans体では対称性により結合双極子が相殺される。組成が同じでも構造は溶解性、置換反応、標的結合、薬理を変える。

上級立体記述子とフラックスionality

cis/transはすべての配位多面体に使える記述子ではない。低対称構造には位置番号や規定記述子を用い、複雑な場合は配位幾何とドナー原子の対応を明示する。

錯体はフラックスionalなことがある。Berry擬回転は三方両錐の位置を交換し、八面体配位子の再配列は解離・会合・交換機構で進む。図は静止画であり、溶液中の唯一の剛直構造とは限らない。

参考文献