無機化学
結晶構造とX線回折
結晶は原子スケールの周期秩序である。周期配列から散乱されたX線は特定方向で強め合い、回折図形から単位格子と原子配置を調べられる。
直観直観:周期面は回折格子のように働く
隣接する格子面から散乱されたX線の光路差が波長の整数倍なら強め合う。面間隔やX線波長を変えると回折ピーク位置も変わる。
学校学校段階:単位格子とBraggの法則
定義: 単位格子
単位格子は三次元並進で結晶格子を生成する最小の繰り返し体積である。面・稜・頂点の原子は隣接セルと共有されるため、寄与は分数となる。
Braggの法則でdは格子面間隔、θは入射角、nは整数次数である。粉末回折計は通常、入射線と回折線の角度2θを表示する。
| 格子 | 条件 | 例 |
|---|---|---|
| 単純立方 | 全hkl(基底で強度変化) | α-Po |
| 体心立方 | h+k+lが偶数 | α-Fe |
| 面心立方 | h,k,lが全て奇数または偶数 | Cu、Ni |
例: fcc銅の最初のピーク
Cuはa≈3.615 Åのfcc構造である。(111)面についてCu Kα線λ=1.5406 Åから2θを求めよ。
解答
立方晶ではd111=a/√3≈2.087 Å。一次反射でθ=asin[λ/(2d)]≈21.65°、したがって2θ≈43.3°。
大学大学:逆空間と構造因子
構造因子Fhklは単位格子内の原子について、散乱因子と位相を重みとしたコヒーレント和である。格子中心化や多原子基底は系統消滅や強度差を生む。ピーク位置は面間隔、強度は基底情報を担う。
粉末測定では全方位の結晶子からの反射が重なる。ピーク幅には装置分解能、有限なコヒーレント領域、微視的ひずみが反映され、背景・配向・吸収は定量解析を複雑にする。リートベルト法は全プロファイルを精密化する。
例: 立方反射を指数付けする
λ=1.5406 Åで2θ=29.4°のピークを(200)と帰属した。格子定数aを見積もれ。
解答
θ=14.7°、d=λ/(2sinθ)≈3.03 Å。(200)ではd=a/2、よってa≈6.06 Å。
上級実結晶・欠陥・逆空間法
有限サイズは逆格子点を広げ、歪みはピークを異方的に移動・幅広化する。全散乱と二体分布関数解析は、Bragg回折が平均周期構造しか見ない場合にも局所秩序を明らかにする。単結晶回折は異方的変位も解析する。
回折だけで相を一意に化学同定できるとは限らない。近縁相は類似パターンを示し、ナノ・非晶質材料は広い特徴を示す。校正済みデータを標準パターンと比較し、組成や別手法も確認する。
参考文献
- Elements of X-Ray Diffraction · B. D. Cullity, S. R. Stock, 2001
- The Structure of Some Crystals as Indicated by their Diffraction of X-rays · W. L. Bragg, 1913