無機化学
結晶格子欠陥
実結晶は完全周期ではない。空孔、格子間原子、置換、不完全転位は輸送・色・強度・反応性を変え、欠陥制御は材料化学の中心課題である。
直観直観:原子の欠損・ずれが固体全体を変える
空孔は単なる空点ではない。周囲原子が緩和し、電荷が再分布し、欠陥がキャリアを捕獲したり拡散経路になったりする。結晶の大部分は秩序を保っていても、希薄な欠陥が特性を支配しうる。
学校学校段階:点欠陥
| 欠陥 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| 空孔 | 格子点の原子が欠ける | NaClのショットキー対 |
| 格子間原子 | 格子間に余分な原子 | Fe中のC |
| 置換原子 | 異種原子が母体を置換 | Si中のP |
定義: ショットキー欠陥とフレンケル欠陥
イオン結晶のショットキー欠陥は化学量論比に従って陽・陰イオンを除き電気的中性を保つ。フレンケル欠陥はイオンを格子点から格子間へ移し、組成を変えず空孔–格子間対をつくる。
Kröger–Vink記法は種、格子サイト、完全結晶に対する有効電荷を示す。プライムは負、ドットは正、xは有効中性を表し、絶対酸化数とは異なる。
例: NaClの電荷補償空孔
化学量論的NaCl結晶でNa⁺サイトの0.01%が空孔なら、ショットキー欠陥ではCl⁻サイトの何%が空孔か。
解答
陽・陰イオン空孔が1個ずつ中性対を作り、1:1のサイト比を保つため、同じ0.01%である。
大学大学:平衡濃度と不定比
有限温度では欠陥形成にエンタルピーを要する一方、配置エントロピーが増す。平衡濃度は質量作用則に従い形成自由エネルギーに対して概ね指数依存し、不純物化学ポテンシャルや酸素分圧が濃度を大きく変える。
欠陥が会合・秩序化・電荷状態変化・弾性相互作用すると希薄近似は破綻する。電荷中性条件は荷電空孔、格子間原子、電子、正孔を結び、欠陥図は化学ポテンシャルとフェルミ準位に対する安定濃度を示す。
例: 熱平衡空孔の見積もり
1000 Kで空孔形成自由エネルギーを1.0 eVとし、kB=8.617×10⁻⁵ eV K⁻¹を用いてcᵥ≈exp(−ΔGf/kBT)を見積もれ。
解答
kBT≈0.0862 eVよりcᵥ≈exp(−11.6)≈9×10⁻⁶。形成エントロピー、相互作用、非理想欠陥化学は無視した概算である。
上級拡張欠陥と機能制御
転位はバーガースベクトルが周回後の格子ずれを表す線欠陥である。粒界は二次元界面、積層欠陥は最密充填層の順序を乱す。これらは塑性変形、粒界拡散、腐食経路を左右する。
制御置換によるドーピングではSiサイトのPはドナー、Bはアクセプターとなる。酸化物の酸素空孔は価数、電子伝導、触媒活性を変え、同じ欠陥が条件により有益にも有害にもなる。
研究研究段階:欠陥工学とエネルギー材料
参考文献
- Defects in Solids · R. J. D. Tilley, 2008
- Relations between the Concentrations of Imperfections in Crystalline Solids · F. A. Kröger, H. J. Vink, 1956