物理化学
化学平衡・平衡定数
反応商と平衡定数の比較、および K が反応式と温度にどう依存するかを学ぶ。
直観直観:二つの逆向きの流れの均衡
可逆反応を放置しても反応は止まらない。正反応が生成物を供給する速度と逆反応が消費する速度が一致する状態に達するだけである。外からは濃度が凍ったように見え、内部では分子が変換し続ける。平衡定数はこの動的均衡がどこに落ち着くかを示す指標である。
学校基礎:K の書き方と読み方
定義: 平衡定数
aA + bB ⇌ cC + dD の平衡では Kc = [C]^c[D]^d/([A]^a[B]^b)。純固体・液体は入らない。K ≫ 1 なら生成物優位、K ≪ 1 なら反応物優位である。K は反応式と温度で決まり、混合物の作り方にはよらない。
測定した組成から K を読み取る簡単な規則が二つある。一つ目、反応を足せば定数を掛け、反応を逆にすれば K の逆数を取り、係数を二倍すれば K を二乗する。二つ目、現在状態で評価した反応商 Q を K と比べる:Q < K なら正方向、Q > K なら逆方向へ進む。
| 反応式の操作 | K への影響 |
|---|---|
| 反応を逆向きにする | K → 1/K |
| 式全体を n 倍 | K → Kⁿ |
| 二つの反応を足す | K → K₁K₂ |
例: ICE 表
Kc = 4.0 の A ⇌ B について、A のみ 1.00 mol L⁻¹ を入れた容器の平衡濃度を求める。
解答
変化量を x とすれば [A] = 1.00 − x、[B] = x。x/(1.00 − x) = 4.0 より x = 0.80。したがって [A] = 0.20、[B] = 0.80 mol L⁻¹ で、シミュレーションの K が大きい曲線が示す平坦値と一致する。
大学大学:熱力学的基礎
平衡は一定 T、p で G を最小にする組成である。駆動力は ΔrG = ΔrG° + RT ln Q = 0 で消え、これは Q = K = exp(−ΔrG°/RT) でのみ成立する。この一つの関係が次を一括して説明する。K は温度のみで決まる、|ΔrG°| が大きいと K は極端になる、Q を変える擾乱(添加・除去・圧縮)は Q = K を回復する方向へ組成を動かす。
ファントホッフ式はルシャトリエの原理を定量化する。吸熱反応(ΔrH° > 0)では ln K は温度とともに増え、発熱では減る。ΔrH° がほぼ一定の狭い範囲では、ln K を 1/T に対してプロットすると傾き −ΔrH°/R の直線となり、反応エンタルピーを求める標準的な方法となる。
例: アンモニア合成
N₂(g) + 3H₂(g) ⇌ 2NH₃(g) は ΔrH° ≈ −92 kJ mol⁻¹(発熱)。反応器を加熱すると K は増えるか減るか。平衡収率はどうなると予想されるか。
解答
発熱反応では d ln K/dT < 0 なので昇温すると K が減り、NH₃ の平衡収率は下がる。工業的ハーバー–ボッシュ法はこのため妥協する。速度を確保する適度な高温、収率のための高圧、そして平衡到達を速める触媒。触媒は到達を速めるだけで平衡位置を動かさない。
上級発展:活量と実在の混合物
濃厚溶液や高圧気体では相互作用のため、実効濃度は名目濃度と異なる。厳密な定数は活量 aᵢ で K = ∏ aᵢ^νᵢ と書く。水中イオンではデバイ–ヒュッケル理論が活量係数 γᵢ をイオン強度に結び、気体ではフガシティ係数 φᵢ が圧力を補正する。このため濃度で測った「定数」が高イオン強度や高圧でずれても、熱力学的 K は変わらない。
参考文献
- Studies in Chemical Dynamics · J. H. van ’t Hoff, 1896
- Thermodynamics · G. N. Lewis, M. Randall, 1923