物理化学
相平衡・状態図
圧力–温度状態図の相境界・三重点・臨界点、および二成分図の組成依存の相領域を読み取る。
直観直観:どの形態が勝つかの地図
氷・液体水・水蒸気は同じ問い「H₂O はどう配置するのが最適か」への三つの答えであり、圧力と温度で答えが変わる。状態図はその地図で、境界線は二相が完全に均衡する条件を示す。三つの境界が交わる点が三重点、境界が完全に消える点が臨界点である。
学校基礎:状態図の読み方
定義: 相と共存線
相は物性が一様な領域であり、純物質では固体・液体・気体である。共存線上では隣接する二相の化学ポテンシャルが等しく両方が安定である。三重点は三相が共存する唯一の (T, p)、臨界点は液体–気体境界が終わる点で、それを超えると二流体は一つの超臨界流体に溶け合う。
状態図は日常の現象を説明する。水の沸点は蒸気圧曲線が外圧の線と交わる温度で決まり、1 atm で約 373 K、高山では低く、圧力鍋では高い。CO₂ の三重点は 216.6 K、5.18 bar で大気圧より高いため、1 atm では液相に安定領域がなく固体 CO₂ は直接昇華する(ドライアイス)。
例: 水の状態図を読む
273.16 K、611.7 Pa で純粋な水のどの相が共存するか。1 atm で 400 K から 250 K まで定圧冷却すると水の状態はどうなるか。
解答
与えられた点は三重点で、固体・液体・蒸気が共存する。1 atm の経路では、冷却は約373 K の蒸発境界(凝縮)と約273 K の融解境界(凍結)を横切る。蒸気 → 液体 → 氷となる。
大学大学:共存の熱力学
共存線上では二相のモル・ギブズエネルギーが等しい。この等式を微分するとクラペイロンの式が得られ、境界の傾きは転移エンタルピーと体積変化で決まる。
Δ_trV の符号が境界の傾く向きを決める。蒸発では ΔV が大きく正なので、対数圧力で描くと液体–気体曲線は急峻に上がる。シミュレーションの縦軸が lg(p/bar) なのはこのためである。水の融解では液体が固体より密(Δ_fusV ≈ −1.6 cm³ mol⁻¹)なので dP/dT は負であり、加圧で氷は溶ける。異常だが、氷河学やスケートにとって重要である。
ギブズの相律は C 成分 P 相の平衡系の自由度 F を数える。純物質(C = 1)では単相で F = 2(T と p が自由=面)、二相共存で F = 1(線)、三相共存で F = 0(不変の三重点)となる。定圧の二成分 Pb–Sn 図では F = C − P + 1 に縮約し、183 °C の共晶横線は三相不変点なので等温線全体が水平である。
例: 相律の適用
1 atm の Pb–Sn 状態図で自由度はいくつか。(a) 全液体領域、(b) 液相線上で液体と固体 α が共存する場合、(c) 共晶点。
解答
C = 2 で圧力一定なら F = 3 − P。(a) P = 1 で F = 2:温度と組成が両方自由。(b) P = 2 で F = 1:T を決めると各相の組成が決まる(タイラインの両端)。(c) 共晶点では P = 3 で F = 0:温度、共晶組成、二つの固相組成はすべて自然に定まる。
上級発展:状態図が示さないもの
状態図は平衡に関する主張である。実際の冷却では過冷却、ガラス化、準安定相、核生成に制限された経路など平衡地図には現れない現象が起きる。臨界点では密度や組成があらゆる長さで揺らぎ(臨界乳光)、圧縮率が発散し、「液体」と「気体」の区別は意味を失う。三重点近くでは微量の不純物でも温度がずれるため、水の三重点セルは長くケルビンの定義(厳密に 273.16 K、2019年の再定義以前)に使われた。
参考文献
- On the Continuity of the Gaseous and Liquid States of Matter · T. Andrews, 1869
- Phase Diagrams in Metallurgy · F. N. Rhines, 1956