物理化学
電極反応速度論
電極電位が電子移動速度をどう制御するか:交換電流、バトラー–フォルマー式とターフェル則、障壁のマーカス像。
直観直観:電子を丘の向こうへ押す
電極が溶解したイオンに電子を渡すには、過電圧と呼ばれる余分な電圧で電子に十分なエネルギーを与える必要がある。しかし印加電圧は通行料を払うだけではなく、エネルギー地形を傾けて一方の障壁を下げ、他方を上げる。電流は電子の流れの測れるしるしなので、過電圧に対し指数関数的に増える。
学校基礎:電流・電位、白金と水銀が違う理由
定義: 過電圧と交換電流
過電圧 η = E − E_eq は正味の電流を流すために平衡電位を超えて必要な電位差である。平衡でも界面では酸化と還元が続いており、そのとき流れる等しく逆向きの電流が交換電流密度 j₀ で、電荷移動がその表面でどれほど「滑らか」かを表す。
水素発生は表面の重要性を示す。白金では吸着した水素中間体が生成するのに十分強く脱離するのに十分弱く結合し、j₀ ≈ 10⁻³ A cm⁻²。水銀では吸着がほぼなく電子移動が遅く、j₀ ≈ 10⁻¹² A cm⁻²。同じ反応で固有速度が10⁹倍も違うことは、触媒選択が電気化学技術を支配する理由である。
| 電極 | j₀(A cm⁻²) |
|---|---|
| Pt | ≈ 10⁻³ |
| Ni | ≈ 10⁻⁵–10⁻⁶ |
| Pb | ≈ 10⁻¹² |
| Hg | ≈ 10⁻¹² |
大学大学:バトラー–フォルマー式
印加電位は効果を二方向に分ける。電気仕事の割合 α が順方向(ここではカソード)の障壁を下げ、(1 − α) が逆方向の障壁を上げる。二つの指数項の和がバトラー–フォルマー式を与える。
二つの極限が重要である。平衡近く(|η| < 約10 mV)では直線的で j ≈ j₀nFη/RT。電荷移動抵抗 R_ct = RT/(nFj₀) はインピーダンス分光が測る量である。大きな過電圧では一方の指数項が支配し η = a + b lg|j| のターフェル則となり、α = 0.5、n = 1、25 °C で傾き b = 2.303RT/(αnF) ≈ 118 mV/decade。傾きと切片から α と j₀ を求める。
例: ターフェル傾きから機構へ
Pt 電極の水素発生では室温でのターフェル傾きが 118 mV/decade でなく約 30 mV/decade になる。機構について何を示唆するか。
解答
2.303RT/2F ≈ 29.6 mV/decade に近い傾きは実効 αn ≈ 2 に対応し、速い電子移動段の後に律速の化学段が続く機構(ボルマー–ターフェル経路:速い放電の後に吸着 H 原子の遅い再結合)を示す。測定傾きは抽象的速度論ではなく機構の指紋である。
上級発展:マーカス理論と微視的障壁
バトラー–フォルマー式は α を経験定数として扱うが、マーカス理論はその形を導く。電子移動は溶媒殻と内側の配位球を再編成し、活性化エネルギーは駆動力の二次関数 ΔG‡ = (λ + ΔG°)²/4λ(λ は再編成エネルギー)となる。これは平衡近くで α ≈ 0.5 を予言し、測定される対称因子がそこに集まる理由を説明する。さらに有名な「マーカス逆転領域」、つまり酸化還元反応の発熱性を強めすぎると遅くなる領域をもたらす。
電極では反応物のエネルギーは試薬ではなく電位で調整されるため、これらの考えを検証する最もクリーンな舞台が電気化学である。大過電圧でのターフェル傾きの変曲、逆転領域の減速、溶媒やイオンへの k の依存はすべて同じ二次の自由エネルギー放物線からの定量的予言である。
研究研究最前線
参考文献
- On the Theory of Oxidation–Reduction Reactions Involving Electron Transfer. I · R. A. Marcus, 1956
- Electrochemical Methods: Fundamentals and Applications · A. J. Bard, L. R. Faulkner, 2001
- Modern Electrochemistry 2A: Fundamentals of Electrodics · J. O’M. Bockris, A. K. N. Reddy, M. Gamboa-Aldeco, 2000